プラウダ

モスクワの報道は三つのカテゴリーにわかれている。すなわち「真実」「たぶん真実」及び「真実性のないもの」の三つである。 第一のカテゴリーには時報、第二のカテゴリーには天気予報、そして第三のカテゴリーには他の全てが含まれている。

映画『ダンケルク』感想(ネタバレあり)

映画「ダンケルク」を遅まきながら見に行ってきました。その感想とか書いていきたいと思います。ネタバレあります。って言うか史実だし「撤退成功する」って言う時点でネタバレも何もない気はしますが。


見始めた時は何が起きてるかわかりませんでした。というのも陸・海・空でのそれぞれの主人公から見た物語を頻繁に切り替えながら見ていくからです。おまけにその3つの視点に置けるタイムスケールが前述の順番で1週間・1日・1時間となってるのも、作中で明示はされますが最初は混乱します。しかし、ストーリーが続くに連れてその3つの視点がどんどん統合されていくことに、描写の端々から気付かされます。段々と断片が埋まっていく感じが気持ちいいです。

セリフは極端に少なく、ただ淡々と状況が描写されます。セリフが少ないゆえに第三者的でありながらカメラワークは主観に近く、ただ状況に翻弄される戦争のリアリティみたいなのを感じました。この辺は映画「ゼロ・グラビティ」にも通ずるところはあるかもしてません。

そして何より特筆すべきは音楽と脚本とを含めた演出の仕方ですね!台詞が極端に少なく、人間ドラマというものは陰で少し見受けられるくらいです。ハンス・ジマーの重厚な音楽に合わせて爆撃や銃撃のシーンが描かれ、劇伴の拍子と自分の心拍が一致しているようにすら思えました。そしてそれが爆撃・銃撃の緊迫感を盛り立て、終始心をつかんで離しません。まるで自分の生き死にが懸かっているようにすら思えました。また、緊迫感に加えて魚雷で船が沈むときの絶望感、船室で水位が上がってくる圧迫感の描写が絶望を掻き立てます。それとは別の船が沈むときに広がった重油に引火するシーンあるんですが、その時水面下にいた人の様子を描いたりしていて、本当に苦しかったです。

陸・海・空で時間軸が違うのも物語にメリハリを生みます。時間軸が違うおかげでうまい具合に希望をもたせた後に絶望を叩き込むという感じで編集されてるので、希望のあるシーンのあとでも気が抜けません。そうして希望と絶望とにある焦燥感をそれぞれまぜこぜにした後だからこそ、ラストシーンの安堵感がすごいのかなと思います。

あと音響すごかったです。音響よいおかげでどこから銃弾飛んでくるかわからない、どこから爆撃されてるかわからないという戦場でのパニックを体感することができたように思われます。この映画は「観る」っていうより「体感する」っていう方が正しい気がしますね。そういうわけで是非映画館で!